2013年01月05日

世界の経営学者はいま何を考えているのか――知られざるビジネスの知のフロンティア 英治出版 入山 章栄




 経営学というのは、英語ではManagementと言うそうで、広い意味では組織の運営に関すること全てを扱う学問だそうです。

 この本では、世界の経営学者が研究している最前線のトピックを広く紹介しています。

 私が気になったトピックをいくつか挙げます。


  "日本人と一番近いのは実はハンガリーです。" (194ページ)

 ヘールト・ホフステッドという人が、国民性という概念を4つの指標で表せるという「ホフステッド指数」というものを1980年に発表したそうです。

 その4つの指標とは、以下の通りだそうです。

  ・Individualism vs Collectivism (個人主義 対 集団主義)
  ・Power distance (権力格差)
  ・Uncertainty Avoidance (不確実性回避)
  ・Masculinity vs Femininity (男性らしさ 対 女性らしさ)

 で、そのホフステッド指数を使って、ブルース・コグートとハビール・シンが1988に発表した論文 THE EFFECT OF NATIONAL CULTURE ON THE CHOICE OF ENTRY MODE で、国と国の間の国民性がどれくらい離れているかについて研究したそうです。

 その結果から、日本と国民性が近いのは、ハンガリーということになるそうです。

 東欧の国と日本の国民性が近いというのは不思議ですねえ。

 国民性が近ければビジネスがやりやすいですが、遠ければリスクがあるので注意が必要とのことです。


  "最近はインターネットの普及により世界中どこでも情報は手に入るように見えますが、本当にビジネスに必要な深い知識やインフォーマルな情報は、インターネットソースではなく、人と人の直接のコミュニケーションでしか伝わらない部分も多いはずです。したがって起業家はそのような「人に根付いた」深い知識やインフォーマルな情報を求めて、一定の地域に集積する傾向があるのです" (208ページ)

 ブルース・コグートとポール・アルメイダが半導体技術に関する特許の申請書に書かれている、特許を出願した地域のデータを分析した論文 Localization of Knowledge and the Mobility of Engineers in Regional Networks(PDF) を発表し、特許を出願した地域は、シリコンバレーとニューヨークの周辺に集中していることを示したそうです。

 つまり、知識を持った人は、その知識が生かせる労働環境がある場所に集まりやすいということです。

 類は友を呼ぶといいますか、知識を求めて人が集まる結果、その知識を持った人が集団としての知識力を発揮し、さらにその知識を求めて人がやってくるというわけですね。

 ちょっと話が飛びますけど、国家という枠組みがなくなるとするなら、こうやって知識ベースで人が集まって国のようなものを作っていくのかもしれないと思いました。


  "リアル・オプションは「不確実性が高いことはむしろチャンスである」ということを明示的に説明した" (236ページ)

 リアル・オプションとは、例えば、売れるか売れないかよく分からない商品があるんだけれども、とりあえずちょっとだけ作って売ってみて、売れなかったら止めるし、売れたらもっと作るというようなことです。

 ちょっとざっくり過ぎですか?

 もうちょっとちゃんと言うと、儲かるかどうか不確実な要素がたくさんある場合に、儲かる場合と儲からない場合でストーリーを立てて、最初の投資は最低限にしておいて、途中で儲かることが確実になった場合に投資を増やしたり、逆に儲からないことが分かった場合に撤退したりすることです。

 こうすると、従来なら不確実だからという理由で投資をやめてしまう案件でも、失敗した場合の損失を減らしつつ、成功した場合の利益を逃さないように投資することが可能というわけです。

 つまり、不確実性が高い方がチャンスであるという、ワクワクしてくる話なわけです。

 amazonのジェフ・ベゾスも、最初は小さく、在庫を持たないでスタートしたそうですよ。

 インターネットで通販というスタイルが定着するかどうか不確実だったので、まずは在庫を持つリスクを減らすために、書籍の大手取次の倉庫があるシアトルで事務所を構えて、注文を受けてから倉庫に買い付けに行ったそうですよ。ズル賢いですね!

 その後amazonはご存知の通り、インターネット通販の雄として巨大な倉庫とサーバを持つに到るわけですが、初期の投資を最低限にして、儲かりそうと分かってから投資を増やすという、リアル・オプションの考え方に当てはまりますねえ。


 このように、経営学は皆が何となくそうだろうなと思っている戦略を、客観的データや分析を駆使して科学的に証明しようとする学問だそうです。

 今後の更なる発展に期待ですね。





posted by あごた at 14:34| Comment(0) | 経営学